【目的】1982年初めから1995年末までの14年間の佐賀県がん登録に基づいて、胃、子宮頸肺、大腸、乳房の各部位のがんについて、がん検診が生存率に与える影響を調べた。【方法】1.(相関分析)性、年齢、進行度と受診契機(検診か否か)との相関を調べた。2.(コホート研究型の解析)がん検診を医療機関への受診契機としたがん患者を検診群とし、それ以外の受診契機のがん患者を非検診群とした。生存率へ与える受診契機の影響をCox回帰分析によって性・年齢を調整して評価した。3.(症例対照研究型の解析)各がんの1995年末までの死亡者を症例群とし、当該部位のがんに罹患し症例群と性・出生年が同じで1995年末までの生存者を対照群として、受診契機(検診か否か)を要因としたデータをconditional logistic回帰分析法によって解析した。【結果】1.相関分析の結果、検診群は非検診群よりも乳房を除く4部位で検診時の年齢や進行度が低く、肺で女性の割合が大きく、大腸で男性の割合が大きかった。2.コホート研究型の解析結果、いずれの部位でも検診群は非検診群と比べて有意にハザード比が低かった。3.症例対照研究型の解析結果、いずれの部位でも受診契機ががん検診という要因の死亡に対するオッズ比は有意に低かった。【考察】1.コホート研究型の解析結果も症例対照研究型の解析結果も、ほぼ一致してがん検診の有効性を示した。2.性・年齢、または、性・出生年を調整して解析したが、この研究だけではlength biasやself-selection biasなどがどの程度結果に影響しているは不明であう。3.過去数年間にわたるがん検診の受診歴や、それらのがん検診を受診した理由などに関する調査を追加する必要がある。4.症例対照研究型の解析によるがん検診の評価の報告では一般住人を対照群としている場合が多いが、本研究の対照群は症例と同じ部位のがん患者であった。
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