研究概要 |
2,5-ヘキサンジオン(HD)、アクリルアミド(AM)および塩化アリル(AC)によるneurofilamentous axonopathyの発現機序を明らかにするために、平成10年および11年度の実験結果をふまえ、以下に述べる2つの実験を同時進行中である。 I)ニューロフィラメント(NF)蛋白質の燐酸化の程度と架橋形成能の関係 前年度までに、HD,AM及びAC中毒ラット脊髄よりNFを含む細胞骨格成分を調製し、NF蛋白質の3つのサブユニット(それぞれNF-H,M,L)をSDS-PAGEにて分離し、その後、抗NF(H+M)抗体あるいは抗リン酸化NF(H+M)と^<125>I-プロテインを用いたイムノブロット法により、各中毒群のNF蛋白質の燐酸化の程度をオートラジオグラフィーで定量した。その結果、対照群と各中毒群との間に、燐酸化の程度の差は観察されなかった。しかしすべての群で、NF-Hの燐酸化に比べ架橋形成したNFの燐酸化の割合が有意に低く、脱燐酸型のNFが架橋形成しやすいことが示唆された。今年度は、この結果を、in vitroで確認すべく、nativeラットの燐酸化NF蛋白質と、NF蛋白質を予めアルカリフォスファターゼで脱燐酸化した試料の各々に、HD,AMあるいはACを加え、37℃でインキュベート後、各群における架橋形成能の程度を比較検討中である。 II)各産業化学物質中毒ラットにおけるカルパインによるNF蛋白質の分解 AMおよびACは、神経軸索内でNFの分解に関与するカルパインのSH基を阻害することによって、NFの蓄積を起こすことが考えられる。そこで、今年度は、対照ラットの脊髄のNF蛋白質を基質としたときの、各中毒ラットのカルパインの活性について検討中である。
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