研究概要 |
In vitro神経毒性試験法を開発するために本研究者らが樹立した神経細胞と神経芽細胞腫のハイブリッド細胞(N18DRG/D2)を用いた。 神経毒性の指標の一つ目として細胞毒性に注目し、染色体異常誘発性(小核誘発性)とアポトーシス誘性をしらべた。試験には、小核誘発性と神経毒性が認められているシスプラチンを用いた。小核の染色にはpropidium iodide(PI)を用い、アポトーシス誘発性はTUNEL法にて検討した。その結果、シスプラチン曝露時間が長いほど小核誘発頻度が高かった。またシスプラチンの曝露量と小核誘発頻度の間に量-反応関係が認められた。しかし、アポトーシスを誘発している小核は増加しなかった。一方、主核のアポトーシス誘発頻度は曝露量および曝露時間の間に量-反応関係が認められた。本実験結果から、小核はアポトーシスにより誘発するというよりも染色体異常によると考えられる。一方、主核は小核と異なり化学物質によりアポトーシスが誘導されると考えられる。 神経毒性の指標の二つ目として、膜活動電位の変化を測定し神経伝達が阻害されているかをしらべた。N18DRG/D2細胞が生きている状態で3,3^,-dipentyloxacarbocyanine iodide染色を施した。そこにシスプラチンを曝露し蛍光強度に及ぼす影響を検討したところ、明らかに蛍光強度が低くなった。 神経毒性の指標の三つ目として、細胞内カルシウムイオン濃度の変化が神経毒性評価法として意義があるかを検討した。神経毒性物質(シスプラチン)をN18DRG/D2細胞に曝露した後にfura-2染色を施し蛍光強度を測定すると抑制が認められた。 従って、本方法は神経毒性をスクリーニングするための試験方法となりうることが示唆された。今後は、種々のメカニズムで誘発される神経毒性物質を調べていく必要があると考える。
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