研究概要 |
本研究の目的は佳子からの累積的ば曝露を有する石綿作業者の血清p53蛋白(p53がん抑制遺伝子産生物)について、喫煙、肺機能、胸部X線所見等、交絡要因を考慮しながら曝露との関連を調べることである。対象は500人超の石綿など鉱物繊維取扱者のコホートから抽出された120名で、インフォームドコンセントを得た後、1997,1998,1999年にELISA法で血清中p53蛋白(各pan-p53, mutant-p-53)を測定した。加えて尿中8-ハイドロキシデオキシグアノシンを酸化的損傷の指標として測定した。 血清pan-p53の平均は50-75pg/mで、正の方向に歪んだ分布をしていた。3年度間の値は有意な正相関を示した。同様の傾向がmutant-p53においても認められた。興味深い結果の一つは、pan-p53が高値を示すものは一秒量(FEV1)の減少が加速する傾向にあったことである。対象者を四分すると、最も高値を示すもののFEV1減少の平均は148ml/年で、他の3グループ(-34,-33,-40ml/年)より喫煙や石綿曝露を補正してもなお有意に大きな減少であった。このことは、一秒量減少の加速とp53遺伝子の活性亢進が、感受性を共有する関係にある可能性を示唆するものである。石綿曝露と血清p53蛋白の詳細な解析は現在なお実行中である。
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