本研究は、プロモーター様作用を示す物質に感作性を有する物質が多いことから、DNA損傷検出系では検出できないプロモーター様物質の検出系を構築する際に適切となる指標が感作性の面からアプローチすることによって得られるのではないかと考え、感作性のある発癌性物質に共通する特徴及び指標となる変化に関する情報を文献等を用いで検討することにより、プロモーター物質検出の指標となるものを見い出し、さらにそれを検出できるような系を作成することを目的としている。 本年度に於いては、まず、毒性情報が整っている化学物質として、許容濃度が設定されており、産業界で使用されている約700物質のなかから、発癌性物質と感作性物質を選ぶ作業を行った。 その結果、感作性を有する発がん物質として三酸化ヒ素、ニッケル、メチレンジアニリンを選び、発がん性を持たないが、刺激性および感作性を有する物質として無水フタル酸、トルエンジイソシアネートを選んだ。このうち、感作性を有する発がん物質3種はいづれもそれ自身は変異原生試験陰性物質である。 上記物質に関する毒性および分子生物学的情報をまとめる作業を現在進行中である。また、感作性のある発癌性物質に共通する特徴及び指標となる生化学的変化(p16、p53、血管上皮成長因子など)についてさらに詳細な検討を加えるとともに、その検出法についても検討しているところである。次年度に於いては、これらが実際に指標となるか否かを培養細胞などを用いて検討する予定である。
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