研究概要 |
本研究は、発がんのプロモーター様作用を示す物質に感作性を有する物質が多いことから、DNA損傷検出系では検出できないプロモーター様物質の検出系を構築する際に適切となる指標を得るために、感作性のある発がん物質に共通する特徴および指標となる変化を見いだすことを目的としている。 前年度における検討を踏まえて、本年度は指標となる生化学的変化としてp16遺伝子に注目した。p16遺伝子は染色体9p21にあり、この領域の欠失が前がん状態で見られている。発がん性芳香族アミンの曝露による最初の症状は刺激感作性皮膚炎で、その後高率に膀胱がんが起こったことはベンジジンで明白になっている。それ故、指標となる生化学的変化としてp16遺伝子の欠失を選び、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法により9p21欠失を検出する方法を作製し、図書として報告した(環境発がんのブラックボックスを探る、1999)。また、ヒト培養細胞系における実験では、ストレス物質であるヘミンがプロトオンコジーンc-fos mRNAをMAP kinaseとは関係なく誘導したことを報告した(Y Masuya,et al.,Biochem Biophys Res Commun 260:289-295,1999)。さらにヒ素による細胞変化はマイクロチュブルの凝縮に始まることを観察しており、その論文は現在投稿中である。
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