研究概要 |
本研究は発がんのプロモーター様作用を示す物質に感作性を有する物質が多いことから、感作性のある発がん物質の特徴および指標となる変化を見いだし、DNA損傷検出系では検出できないプロモーター様物質の検出系を構築する指標を得ることを目的としている。 プロモーター様発がん物質としての特徴を良く揃えている物質としてヒ素を選び、それを用いて様々な実験を実施している。前年度の実験において、ヒ素による細胞変化がマイクロチュブルの凝縮に始まることを観察し、その指標となるGTPaseをアイソトープを使わないで感度良く測定する方法を報告した。本年度においてはその方法を用いてヒ素の動態を観察し、DMAが分裂期細胞のチュブリンに作用し、異常紡錘体を形成することを明らかにした(Appl. Organometal. Chem.,15:676-682,2001)。この変化はヒ素の発がん性の特質を現していると考えられ、これが他の感作性発癌物質においても起こっているかを調べる必要があり、今後の課題である。 また、感作性発がん物質のホルムアルデヒドは現在問題となっている住宅内汚染の原因物質と考えられていることから、環境および医学的な面から住宅実態調査を実施し、報告した(臨床環境医学10(1):3-10,2001)。更に大規模な調査を2000年に実施し、測定法による濃度の違いを明らかにした(Tohoku J. Exp. Med, 196(2):in press,2002)。現在、健康影響に関する結果を論文に作成中である。今後、調査対象者を追跡することにより、住宅曝露によるホルムアルデヒドの影響を明らかにできると考えている。今後の課題である。
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