研究概要 |
発癌予防を目的とする環境疫学研究において発癌性物質の長期・微量・複合曝露をあらわすバイオマーカーの利用が期待されている。しカル、これまでのところ個人レベルでのリスクを反映できるような生物学的影響量マーカーは少なく、バイオマーカー間の相互関係も不明な点が多い。 末梢血を利用したDNA,ヘモグロビンおよびアルブミン付加体量の測定の環境疫学研究への応用可能性を検討する目的で。本年度は以下の検討および調査をおこなった。 1.ポストラベリング-HPLCによるヒト白血球中のベンゾ(a)ピレンのDNA付加体の分析について基礎的な検討をおこなった。結果は,検出可能であったが,感度が十分とはいえず,さらに検討を継続している。 2.喫煙者を対象として,ガスクロマトグラフィー質量分析法によるベンゾ(a)ピレンのヘモグロビンおよびアルブミン付加体の分析について基礎的な検討をおこなった。ヘモグロビン付加体については,通常の採血量では感度が不十分であったが,アルブミン付加体については,末梢血2-3mLを使用して喫煙者で検出できることを確認した。 3.実際にコークス炉で高濃度のPAHに曝露されている作業者集団を対象に、ベンゾ(a)ピレンのDNA,ヘモグロビンおよびアルブミン付加体量の測定を行い、これらのバイオマーカーの環境疫学研究へ応用可能性を検討するために,作業環境中の多環芳香族炭化水素濃度が高いことが確かめられているコークス炉で作業を行っている作業者約200名を対象として,過去から現在の曝露情報の収集と生体試料(血液、尿)の採取を行った。なお,研究への協力にあたってはインフォームドコンセントを得た。 次年度は,これらの生体試料を使用して,付加体量分析の曝露評価への応用可能性を検討する予定である。
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