1. 新しいタイプのB型インフルエンザウイルスの早期診断 患者の検体(咽頭ぬぐい液、うがい液)からウイルスを分離し、赤血球凝集阻止(HI)試験で型同定を行ったところ、96/97シーズンには、B型インフルエンザウイルスは、従来流行していた山形タイプと再興流行したビクトリアタイプの2つの抗原性の異なるウイルスが分離された。 97/98シーズンは大阪府内ではB型インフルエンザウイルスが分離されなかったが、翌シーズンの流行を予想するため、近県より分離株を入手し、その型別および抗原性をチェックしたところ、塩基配列より山形タイプのウイルスではあるが、従来の山形タイプと抗原性の異なるウイルスが分離されていたことが判明した。そこで、このウイルスをマウスに免疫し、モノクローナル抗体を作製した。98/99シーズンは大阪府にてB型インフルエンザウイルスの流行がみられたが、分離ウイルスは、感染研よりの標準フェレット血清によるHI試験ではビクトリアタイプ、山形タイプの両方に同等に反応し、どちらのタイプに属するが判別できなかった。若年者のビクトリアタイプに対する抗体保有率は低く、また、98年度のワクチンには山形タイプのみが入っていたので、流行規模が懸念されたが、新しく作製したモノクローナル抗体を用いてPAP染色を行ったところ、山形タイプに属するウイルスであることが判明した。大阪府の98/99シーズンのB型インフルエンザウイルスの流行は特に大きなものにならずに終息するものと思われる。 2. AH5型インフルエンザウイルスの早期診断 AH5型のインフルエンザウイルスの流行に備えて、A/Turkey/Ontario/7732/66(H5N9)をマウスに免疫し、モノクローナル抗体を作製中である。H5に特異的に、また、幅広く反応する抗体を選別しを作製し、PAP染色に応用し診断に役立てる予定である。
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