1.AH5型インフルエンザウイルスの早期診断 AH5型のインフルエンザウイルスの流行に備えて、A/Turkey/Ontario/7732/66(H5N9)対するモノクローナル抗体を作製した。H5に特異的に、また、幅広く反応する抗体をPAP法に応用することにより、診断に役立てる予定である。 2.新しいタイプのB型インフルエンザウイルスの早期発見 98/99シーズンには、B型インフルエンザウイルス、山形タイプの流行が見られた。赤血球凝集阻止(HI)試験では、特に差異はみられなかったが、モノクローナル抗体を応用したPAP法で解析すると、全ウイルス株の6%にあたる株が、5H4、8B3の2抗体で染色されないことが判明した。また、この2抗体は96/97および97/98シーズンに採取された全てのウイルス株と98/99シーズンの94%にあたる株に対し、中和活性を有したが、これら6%の株には中和活性を有しなかった。そこで、5H4で中和される株を5H4存在下で培養し、5H4に抵抗し増殖しうる変異株を誘導した。これらの変異株、及び、98/99シーズンの2種類の株のHA1のDNAシークエンスを行い、解析したところ、149番目のアミノ酸がアルギニンよりリジンに変化していることが、5H4に対する反応性の変化の原因であると示唆された。149番目のアミノ酸がアルギニンであることは、山形タイプに特徴的で、10年来変異がなかったので、この知見は特筆すべきものであると考えられる。ウイルス株に新しい変異が見られたことで、次のB型インフルエンザウイルスの流行が以前より大きなものになることが懸念される。 3.AH1型インフルエンザウイルスの早期診断 1999/2000シーズンには4シーズンぶりにAH1(Aソ連)型の流行が見られた。現在、臨床分離株に対するモノクローナル抗体を作製中である。HAに対する抗体を作製することで、次回の流行時の迅速診断ができ、また種々の抗体に対する反応性の変化より、今回流行ウイルス株との変異の大きさが示唆される。これにより、そのシーズンにおける流行の規模が予測が可能となる。
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