研究概要 |
研究実施計画に基づき、本年度は、母乳中のダイオキシン類の汚染調査、および冷凍保存乳脂肪を用いた1973年以降の経年変化を測定し、貴重なデータを得ることができた。 測定に用いた乳脂肪は、1973年以降PCB汚染調査のために冷凍保存していたもので、年齢等のファクターを最小限におさえるため、年齢25〜29才初産婦のみを対象とし、母乳採取年度別に等量混合(3滴〜5滴)(各年度19〜32人)し、1973年から96年まで合計24検体について、TCDDs7種類、TCDFs10種類(2,3,7,8位に塩素のあるもの)、コプラナーPCBs3種類を測定した(1997年および98年についても現在測定中である)。分析は、乳脂肪をアルカリ分解した後、多層シリカゲル力ラムで精製してアルミナおよび活性炭力ラムで、PCDD/PCDFフラクション、コプラナーPCBフラクションおよびPCBフラクションに分別し、高分解能GC/MSで測定する方法を用いた。 その結果、乳脂肪中のダイオキシン濃度はTEQ概算で、1974年の63.5pg/gを最高に年々減少し、1996年では、24.1g/pgであった(コプラナーPCBを含む)。しかしながら、それぞれの化合物の年推移濃度(実濃度)は、大きく異なり、コプラナーPCB濃度(3種の合計)は、1974年では524pg/gだったのが、1996年では129pg/gと約174に、また、7塩化のPCDDが、156pg/gから9.9Pg/g(6.3%)、8塩化のPCDDが、1265pg/gから67pg/g(5.3%)へと大きく減少しているのに比べて、5塩化、6塩化のPCDD濃度は、ほぼ横ばいであり、それぞれの化合物の汚染源が、異なることが考えられた。 有機溶剤をほとんど使用しない超臨界流体抽出装置を用いたダイオキシン類の分析は、トラップにグラファイトカーボンを用いる方法を、現在検討中である。
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