研究概要 |
研究実施計画に基づき、本年度は、超臨界流体抽出装置(SFE)を用いたダイオキシン類の分析法の検討を行った。SFEは抽出溶媒に二酸化炭素を用いることから、環境への負担は有機溶媒による抽出より軽い。また、抽出・精製操作が自動化・簡略化が可能であり、分析者の安全の確保についても有用である。本研究では、予め溶媒抽出した乳脂肪を用いて、精製効果を得るため、トラップの充填剤と溶出フラクションについて検討した。また分析の簡略化と精度の向上のためネガティブCI(NCI)法やGCへの大量注入法についても検討した。 まず、SFEのトラップとして、活性炭やCarbo Trap等を検討した。その中でグラファイトカーボンは活性炭と同様の材質で、表面が活性炭よりも平面構造を取っていることから、同じ平面構造を持つダイオキシン類を選択的に吸着できるのではないかと考え、トラップにEnvi Carbを用いた。EnviV Carbは特にOCDDで吸着が強く、溶出フラクションが広くなりすぎるためODSで希釈したものを用いた。GC/MSは添加回収実験であることなどの理由から四重極を用いた。また、感度やS/Nを検討したところ、特に高塩素化ダイオキシンにおいて、EIよりNCIの方が良かったことからNCIのSIMを用いて、これら溶出フラクション中のダイオキシン類濃度を測定した。また、一部大量注入-NCI(SIM)による測定も検討した。測定対象のダイオキシン類はTCDDs7種類、TCDFs6種類(2,3,7,8位に塩素のあるもの)、コプラナーPCBs3種類とした。これらダイオキシン類でほぼ良好な結果を得ることができたが、一部SFEから溶出した脂肪が、トラップの後、ライン内で詰まってしまうことがあり、脂肪負荷量に制限があることが認められた。溶出に用いた有機溶媒は24mlで、従来と比較して非常に少ない量で分析でき、また、終夜運転による自動化も可能である。また同時に大量注入-NCI(SIM)法を用いることにより、濃縮操作の簡略化や分析精度の向上をはかることも可能であると考えられた。
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