研究概要 |
種々の法医試料(血痕、毛髪、唾液斑、膣内容,爪、タバコの吸い殻、混合斑痕)についてHot Start PCR-SSP法によりHLA-DR,-DQBタイピングを試み、以下の結果を得た。 血痕、唾液斑、膣内容、タバコの吸い殻及び混合斑痕は1×1cm大をまたプラスチック、木片、金属上の斑痕は滅菌精製水で湿らせた1×1cmのガーゼで拭き取り検体とした。これらはフェノール・クロロホルムでDNAを抽出しMicroconR100で濃縮精製した。タバコの吸い殻はChelex法で抽出した。蛋白含量の多い検体ではフェノール・クロロホルム抽出が優れており、また濃縮精製することにより良い結果が得られた。 各試料についてのタイピング成功率は血痕で66/68(97%)、唾液斑で38/38(100%)、毛根で36/37(97%)、タバコの吸い殻で52/56(93%)、膣内容で2/2(100%)、爪で1/1(100%)であった。総合する.と161/172(94%)の成功率を示した。混谷斑痕ではマイナー成分がメジャー成分の10%の割合で混合されている検体においてもマイナー成分の特異バンドも検出可能であった。false positiveやfalse negativeによりタイピングがうまく行われなかった場合が観察されたがこれは純度の高いDNAが十分量回収できなかったことが主な原因と考えられる。DNAの保存中の安定性については20年経適した血痕からもタイピングが可能であった。 HLA-DR,-DQBタイピングについてはほぼ満足できる結果を得ることができた。さらに人骨,歯牙等の検体を加え法医試料の多くをカバーできるタイピング法を目指す。さらにHLA classIも同様にタイピングを行いfalse positive、false negativeの原因を追求して成功率の向上を図り法医実務への応用を目指している。
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