1.牛の心筋ミトコンドリアが酸化すると、そのリン脂質の構成脂肪酸にリノール酸酸化物である、ハイドロキシ酸、ケト酸、エポキシドが認められるようになることをガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー法を用いて発見した。 2.牛の心筋ミトコンドリアリン脂質の2位に存在する構成脂肪酸の中には、炭素数が17のシクロプロパン脂肪酸が存在していることをガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー法と液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー法を用いて、我々は初めて見出し報告した。また、このシクロプロパン脂肪酸が細胞膜や、ミクロソームなどの膜のリン脂質の構成脂肪酸として普遍的に存在することを示した。ヒト心筋、肝臓、ラット肝臓のミトコンドリア、細胞膜からもこの脂肪酸が検出された。 3.焼死したヒト死体血の血清からは、シクロプロパン脂肪酸が遊離した形態で存在し、健常人の血清には存在しないことが示された。このため、死体血からのシクロプロパン脂肪酸の検出を試みたところ、死後においては一般に他の不飽和脂肪酸と共にシクロプロパン脂肪酸も血清中に出現することが明らかになった。 4.死後経過時間と血清中の遊離シクロプロパン脂肪酸の濃度に関しては直線的な相関性は得られなかった。 5.シクロプロパン脂肪酸には心筋収縮力の抑制作用があることが示唆された。
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