除草剤パラコートの毒性発現には活性酸素が起因しており、活性酸素による組織の過酸化は、老化や虚血性心疾患の原因ともされている。ラットを用いてエサ成分の不足と、パラコート中毒との関連について調べた結果、抗酸化剤であるビタミンEやC、その他のビタミンの不足よりもミネラル不足の方がパラコート中毒を促進することを見出した(Jpn.J.Forensic Toxicol.1998発表)。さらにミネラル成分のうち、どのミネラルが最も重要であるかを知るために種々のミネラル不足のエサにパラコートを添加して中毒状況を調べた。アルミニウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅、クロム、セレンの中で、マグネシウム不足が最も中毒を促進することを見出した(Arch.Toxicol.1998発表)。パラコート中毒により発生した活性酸素はビタミンCによっても無毒化されるが、その過程においてビタミンCはアスコルベートラジカルとなる。パラコート中毒ラットの肺、牌、肝において、アスコルベートラジカルが正常ラットよりも多量に生成し、かつより急激に減少することを見出した(The Proceedings of the 2nd International Conference on Bioradicals 1998発表)。パラコート類似のジクワットによる中毒の場合には、腎、牌、肝においてアスコルベートラジカルの生成系と消去系が共に活性化されることが示された(第6回インド・太平洋地域国際法医・法科学会1998発表)。平成10年度科研費で入手した原子吸光光度計を用いて、これらのラットの血清中のマグネシウム量を測定した。その結果、ミネラル不足を伴うパラコート中毒において血清中のマグネシウム量が最も上昇することを見出した。
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