研究概要 |
老化や虚血性心疾患は組織の過酸化に起因するとされている。除草剤パラコートの毒性発現には、活性酸素が関与しており、パラコートは毒物としてのみならず、過酸化機構解明のために用いたれている物質である。 パラコート中毒により発生した活性酸素はビタミンCによって無毒化される過程で、アスコルベートラジカルを生成する。中毒ラットの肺、脾、肝、血清、及び中毒ヒト血清ではこのラジカルが多量に生成されることを見い出し報告した(Free Radical Research,2000:6th Indo Pacific Congress,1999)。パラコート類似のジクワットによる中毒では腎、脾、肝、血清でこのラジカルが多量に生成されることを見い出し報告した(Jpn.J.Forensic Toxicol.,1999)。抗酸化ビタミンの不足よりも、ミネラル不足の方がパラコート中毒を促進し、生体内に過酸化物質を多量に生成することを見い出し報告した(静岡県立大学特別研究報告書,1999)。 パラコート中毒とミネラルとの関係について今まで報告がなかった。平成10年度科研費で、ミネラルを測定するための原子吸光光度計を入手することができ、本年は研究を以下のように進展することができた。ミネラル不足のうちで、マグネシウム不足が中毒を最も促進すること、生体酸化には鉄と銅が関与していることから、ラットの組織中のマグネシウム、鉄、銅レベルとパラコート中毒との関連を調べた。これらレベルは各々の正常レベルを1とする中毒ラットではマグネシウム(血清1.0、肝1.2、腎2.1)、鉄(血清0.4、肝2.7、腎1.8)、銅(血清1.5、肝1.2、腎0.8)と顕著な変化を示し、ミネラルの重要性が示された(法医学会,2000年4月 発表予定)。
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