研究概要 |
アルコール感受性に個人差のあることは,これまでALDH2活性の強弱によってのみ説明されてきた.すなわち,活性の弱いタイプのヒトは血中アセトアルデヒド濃度が高くなるため不快症状を呈するというものである.しかし,ALDH2*1/2のheterozygoteは飲酒回数を重ねるうちにアルコールに対する感受性が低くなり,これはCYP2E1が誘導されてくるためであると説明されている. 本研究の目的は,チトクロムP-4502El(CYP2E1)誘導の程度を,CYP2E1mRNAの発現量を定量することにより評価する方法を確立し,それを用いてアルコール感受性の個人差とCYP2E1発現量との相関を検討することにある.これまでに,プライマーのデザインや反応条件等を種々検討し,ヒトリンパ球に発現しているCYP2ElmRNAをRT-PCR法を用いて検出する方法を確立した.すなわち,末梢血リンパ球からRNAを抽出し,RT-PCRを行い,CYP2E1mRNAの発現を確認した.またこれと並行して,健康成人約250名のアルコール代謝関連酵素類(CYP2E1,ADH2,ADH3及びALDH2)の遺伝子型を検出してきており,現在さらに継続して例数を増やしている. 今後,培養ヒト末梢リンパ球を用いたin vitloの実験系として以下の実験を計画している.すなわち,リンパ球の供与者を3群(ALDH2*1/1,ALDH2*1/2及びALDH2*2/2)に分け,各々の群の末梢リンパ球を採取・培養し,飲酒時の血中アルコール濃度に準じて,数段階のアルコール濃度となるよう,アルコールを培養液中に負荷した後,経時的にmRNAを抽出,定量的RT-PCR法を用いてCYP2E1mRNAの発現量を測定する.CYP2E1mRNAの(1)発現量,(2)ピークとなるまでの時間,(3)負荷したアルコール濃度との相関,の3点において3群間で比較し検討する.
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