薬物摂取時期を、試料中の原薬物と代謝物の濃度比から判定するための基礎研究として、本年度はまず代表的睡眠導入剤であるトリアゾラムと、エステル型局所麻酔薬でるテトラカインについて着目し、原薬物と代謝物の高感度同時分析法について検討した。まず、トリアゾラムとその代謝物α-ヒドロキシ体および4-ヒドロキシ体をガスクロマトグラフィー/質量分析法装置(GC-MS)で同時に分析する方法について検討を行った。血液および尿を試料として用い、液液抽出法により3つの化合物を効率よく抽出し、t-ブチルジメチルシリル化後、負イオン化学イオン化GC-MSで分析を行った、その結果、3種の化合物を同時に高感度で検出できることが判明した。この方法は現在Int.J.Legal Med.誌に投稿中である。 次に、エステル型局所麻酔薬であるテトラカインについて検討した。この薬物は非常に不安定なエステル結合を分子内に持ち、血液中のエステラーゼで死後でも迅速にエステルのはずれた代謝物(パラブチルアミノ安息香酸)に変化するため、分析が大変むつかしく血液中の薬物濃度についてもほとんど記載がない。そこで、分析中に加水分解を受けないよう抗エステラーゼを添加し、液液抽出、さらに誘導体化することにより原薬物と代謝物を高感度で検出できる方法を検討したところ、GC-MSにより既報の方法より10倍以上感度のよい分析方法を確立した。(投稿準備中)
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