研究概要 |
本年度はエステル型局所麻酔薬であるテトラカインについて検討した.この薬物は非常に不安定なエステル結合を分子内に持ち,血液中のエステラーゼで死後でも迅速にエステルのはずれた代謝物(パラブチルアミノ安息香酸)に変化するため,分析が大変むつかしく血液中の薬物濃度についてもほとんど記載がない.そこで,分析中に加水分解を受けないよう抗エステラーゼを添加し,液液抽出、さらに誘導体化することにより原薬物と代謝物を高感度で検出できる方法を検討したところ,GC-MSにより既報の方法より10倍以上感度のよい分析方法を確立した。 さらに,健常成人に0.25mgのトリアゾラムを1錠経口投与し,経時的に尿を採取,尿中のトリアゾラムとその代謝物を我々が確立した方法で測定し,原薬物と代謝物,あるいは代謝物同士の比から,薬物の摂取時期が推定可能かどうかについて検討した.その結果,α-ヒドロキシ体は4-ヒドロキシ体に比べて尿中への排泄が早く,従って,尿中のα-ヒドロキシ体の4-ヒドロキシに対する比が,薬物摂取からの時間経過に伴い,減少することが判明した.一方トリアゾラムは6-8時間尿まで検出されその値はほぼ一定であった.以上の結果,α-ヒドロキシトリアゾラムと4-ヒドロキシトリアゾラムおよびトリアゾラムの尿中濃度の比は,薬物の摂取時期を推定する上で大変有用であることが判明した.
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