4動脈閉塞全脳虚血後再潅流モデルラットを用い、視床下部と側坐核について、全脳虚血後再潅流による神経細胞障害を、脳内徹小透析膜法による生理学的方法、病理学的方法及び生化学的方法を併用して検討した。本年度は、第1段階として、再潅流後4日の時点での生理学的及び病理学的検討を行った。 その結果、組織学的には、視床下部と側坐核の両者において、神経細胞のpycnotic neural change、浮腫等の虚血による神経の変性所見を認めた。免疫組織化学的には、GFAP染色にて、陽性反応を認めた。 脳内微小透析膜法による検討において、側坐核細胞外液中へのドパミン放出の基底レベルが低下しているのに対して、視床下部のドパミン放出の基底レベルには、コントロールと差がなかった。セロトニンの放出の基底レベルには、視床下部と側坐核のいずれにおいても、コントロールと差が認められなかった。 他方、カリウムイオン刺激によるドパミン放出増加については、側坐核では、コントロールに比し、増強された放出増加が認められたが、視床下部では、コントロールに比し放出増加が抑制されていた。セロトニンの放出増加については、視床下部と側坐核のいずれにおいても、コントロールと差が認められなかった。 従って、視床下部と側坐核のいずれにおいても、モノアミン放出能よりみたドパミン及びセロトニン作働性神経細胞の機能は、全脳虚血後再潅流に対し強い抵抗性を持っていると考えられた。ただし、ドパミン作働性神経細胞の機能は、視床下部と側坐核とでは上記のように機能の保持の態様に差があることもわかった。 視床下部と側坐核のいずれにおいても、形態学的変化にも関わらず、モノアミン放出能が保たれていた以上の結果は、形態の変化に先行して機能は喪失されるとする従来の常識的理解に反するものであった。
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