研究概要 |
Ph抗原は,RHCEとRHD遺伝子にコードされているが,Rh抗原を全て欠損するRhnull表現型のなかには,RHCEとRHD遺伝子両方の異常に起因するものと,RH遺伝子とは別の坐位に存在するRH50糖蛋白遺伝子の異常に起因するものとが存在することを明らかにした。このことによって,Rh50糖蛋白はRh抗原が赤血球膜に発現するために不可欠の因子であることが明確になった。この事実に基づいて,Rh抗原発現細胞系の樹立を試みた。その結果,Rh50糖蛋白をもともと発現する赤白血病細胞株は,Rh cDNAを遺伝子導入するだけでRh抗原を発現するのに対し,Rh50糖蛋白をほとんど発現していない非造血細胞系の細胞株にRh50 cDNAとともにRh cDNAを遺伝子導入しても,Rh抗原は発現してこないことを明らかにした。この非造血細胞系を用い,免疫組織化学的解析を行った結果,この細胞株では小胞体などの細胞内小器官への抗原の発現は認められるものの細胞表面への発現は僅かであることが判明し,赤芽球系細胞特異的なRh抗原発現に係わる第4,第5番目の遺伝子の存在がさらに示唆される結果となった。しかし,この細胞株にヒト骨髄由来のcDNAライブラリーを遺伝子導入しRh抗原の発現を指標にスクリーニングを行っているが,現在までのところ新たな遺伝子を手に入れるまでには至っていない.一方で,Rh50遺伝子5非翻訳領域をクローニングクし,そのプロモーター解析を行い,Rh50遺伝子の発現調節機構の解析も同時に行った。その結果,RH50遺伝子は赤芽球系細胞特異的に発現する機構を明らかにすることができた。現在,そのエンハンサー領域のクローニングを行い,さらに詳細な転写調節機構の解明に向けてデータを蓄積しつつある。
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