研究概要 |
法医学的微量試料からのDNA多型分析とDNA保存の法医学的意義を検証した。 1)ABO式変異型の血痕,Aend,AendB,Bm,ABmにおいて,血清学的方法ではそれぞれO型,B型,O型,A型として判定され変異型に対する血液型抗原は検出できなかったが,糖転移酵素の遺伝子診断(cDNA261&703)ではそれぞれA型,AB型,B型,AB型として判定された。また,腐敗したある精液試料では血清学的方法ではAB型として判定されたが,糖転移酵素の遺伝子診断(cDNA261&703)ではA型として判定された。すなわち,いづれも血清学的検査法と糖転移酵素の遺伝子診断の検査成績は一致しなかった。 2)微量試料の場合は血清学的方法では検査試料を使い切ってしまうので精査が困難であった。糖転移酵素の遺伝子診断では全ゲノム増幅法を応用することによりPCR法で1箇所の塩基置換の検査が可能な未処理DNAから血液型検査に必要な2〜3箇所の塩基置換の検査がおよそ30回分可能になったことを明らかにした。従って,遺伝子診断の検査部位を糖転移酵素のアミノ酸の置換を伴う5ヵ所(cDNA261,526,703,796,803)で行ったところAend,AendB,Bm,ABm等の変異型血痕では変異型に対応する標準的な糖転移酵素の塩基置換であることを明らかにした。また,腐敗した精液試料の場合には5ヵ所のうち1ヵ所(cDNA703)の塩基配列の異常で有ることを明らかにした。 3)さらに,全ゲノム増幅法で増幅保存したDNAを用いることにより,Lewis式血液型の遺伝子型等その他の遺伝子多型も検査できることも明らかにした。
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