研究概要 |
法医学的微量試料からのDNA多型分析とDNA保存の法医学的意義を検証し,PEP法により増幅したDNA試料の取扱いについて考察した。 1)保存したPEP処理DNA試料を用いても,未処理DNA試料を用いても得られたDNA型(MCT118型判定,TH01型判定,HLA-DQα型判定,LDLR型判定,GYPA型判定,HBGG型判定,D7S8型判定,GC型判定,性別判定,ABO式血液型の遺伝子型判定,及び,Lewis式血液型の遺伝子型判定)及び塩基配列は同一であったことを検証した.従って,PEP処理DNA試料を保存することにより繰り返し検査が可能になり,未処理DNA試料を用いた検査成績の再現性,信頼性,客観性は向上すると思われる.原則的には法医学的試料からのDNA型判定は未処理DNA試料でおこない,PEP処理DNA試料では未処理DNA試料を用いた場合と同一のDNA型であったに留めるべきである。未処理DNAで検査出来ない微量DNA試料への応用は控えるべきである。 2)未処理DNAのDNA型の検出限界量はローカス毎に異なるが,PEP処理DNA試料のDNA型判定に関しては一定の未処理DNA量を定めることを提案している.この未処理DNA量は私たちの決定した検出限界量以上であり,PEP処理DNA試料を用いることにより未処理DNAで検査できなかった他のローカスのDNA型の判定もできるようになると思われる.しかし,法医学的応用に関しては多数の研究者の追試,研究等が望まれる.
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