研究概要 |
Short tandem repeats(STR)を用いた親子鑑定は有力な検査法である。STR多型を用いる場合には突然変異についての検討が必要であると考えられたので、親子鑑定の肯定例43例に9種(CSF1PO,TPOX,TH01,F13A,FES,vWA,D16S539,D7S820,D13S317)のSTRの型判定を行った。いずれの例でも両親と子で矛盾する例は存在しなかった。しかし、vWAとD7S820の2つのSTRにおいて市販のアレリックラダーよりも塩基数が多い領域にバンドが検出された1例(vWA)と少ない領域に検出された1例(D7S820)が存在し、それらのバンドはいずれも母から子へと遺伝していた。そこでそれぞれの塩基配列の解析を行ったところ、vWAで見られたアレリックラダー(アレル13〜20)よりも塩基数が多いアレルの塩基配列は5'FR-TCTA(TCTG)_4(TCTA)_<16>TCCATCTC T-3'FRであり、下線部分のTCTAの反復回数の違いによるアレル21であることが分かった。このアレルの出現頻度を調べたところ、0.0036(n=278)であり、アレル21を持つ3人の塩基配列はTCTAの16回繰り返し配列であった。アレル21の日本人での頻度は0.001〜0.002と報告されていることから、きわめて稀なアレルであると考えられる。一方、D7S820で見られたアレリックラダー(アレル6〜14)よりも塩基数が少ないアレルは、その移動度からアレル5と考えられた。しかし、このアレルの塩基配列については現在までのところ明らかにできてはいない。このアレルについての出現頻度や塩基配列に関する報告はないので、このアレルも頻度が低いと考えられる。
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