研究概要 |
最近活性酸素自身が細胞内の情報伝達に直接関与することが分かってきた。すでにラットにパラコート(PQ)を投与するとGSH合成系酵素の遺伝子レベルでの亢進によりGSH levelが肺でのみ有意に増加することが分かった。そこで肺mRNAを抽出しRT-PCRで活性酸素関連酵素群(Cu,Zn/SOD,Mn/SOD,catalase,glutathione peroxidase:GPX,glutathione reductase:GR)の発現レベルを比較検討した。その結果、catalaseは低下の傾向を示したが、GPX,GR,は増加の傾向を示した。SODはともにとくに変化が認められなかった。さらにPQによる肺線維化現象に進行する初期段階に焦点をあて、PQ関連遺伝子について検討を加えた。すなわち20mg/kg投与群(投与後3時間)のラット肺cDNAを試料に1サンプルの比較を78通りのprimerの組み合わせでdifferential displayをおこなった。電気泳動の結果、発現の違いが認められるバンドが多く観察されたが、artifactも多く含んでいた。抽出した中からPQで発現が促進する6種類のクローンを単離することができた。塩基配列を決めた後あらためてprimerを合成しRT-PCRで経時的に検討した結果、それぞれは発現が経時的に上昇するもの、また一時的に発現の促進がみられるものであった。ホモロジー検索ではいづれも未知の遺伝子であったが、3'末端部分の情報しか得られていない現状では当然の結果であると考えられ、さらに5'側上流の配列を決める必要があった。今回得られたこれらの遺伝子が、PQによる肺線維化現象のfirst stepに関与する可能性が示唆された。
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