研究概要 |
アレルギー性炎症の効果相としては、アレルゲン特異的IgEが、肥満細胞のIgEレセプターに結合そして、架橋することより開始する。まず、肥満細胞膜におけるエクトキナーゼのの普遍的意義を検討するために、細胞非透過性のセリンスレオニンキナーゼ阻害薬であるK252bのヒスタミン遊離に及ぼす影響をみた。K252bは、抗原あるいはIgEレセプターに対するモノクロナル抗体刺激によるIgE依存性の肥満細胞株RBL-2H3細胞からのヒスタミン遊離を、用量依存性に抑制した(IC_<50>=0.5,0.2μg/ml)。一方、非特異的刺激であるカルシウムイオノフォアA23187による遊離には、効果が見られなかった。ヒト末梢血好塩基球細胞に及ぼす影響も検討した所、同様にIgE刺激による遊離への抑制効果(IC_<50>=1.5μg/ml)と非特異的刺激による遊離への効果なしの結果が得られた。この、抑制効果は、10分前の前処置(pretreatment)で見られるばかりでなく、抗原刺激後1-3分後の後処置(post-treatment)においても、RBL-2H3細胞とヒト好塩基球細胞において、認められた。 これらのことは、IgEレセプター後の初期伝達に、エクトキナーゼが修飾因子として、関与していることを、示唆するとともに、細胞外から直接アクセスできる存在形態であること、感作され炎症反応の進行しているアレルギー疾患を、抑制する治療薬開発のターゲットに成りうることを、示している。このように、アレルギー性炎症の要である肥満細胞における役割を、確認し得た後、初期伝達機構としてのリン酸化とカルシウム流入に及ぼす影響、並びに、エクトキナーゼの分子的実体について、実験進行中である。
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