研究概要 |
我々は、末梢血からの純化で得られる細胞数を考慮して、細胞種としてまず好酸球を選び、そのFcεRI発現をflow cytometryで検討した。その結果、健常人および気管支喘息患者の末梢血から分離直後の好酸球にはFcεRI発現を全く認めないものの、培養後にFcεRIを発現しうることが判明した。この発現の特徴としては、1)IL-4,IL-5,IgEの存在下で7日間以上培養後にFcεRI発現を認めるが、IgE非存在下で、IL-4,IL-5のみでは発現を認めない。2)発現の速度は緩徐で、しかも発現量はflow cytometryの蛍光強度に基づく半定量により比較すると肥満細胞の数十分の1と少ない。3)FcεRI発現量には個人差があり、低レベルの発現しか起こさない例も存在する。4)生存延長因子の非存在下では好酸球は培養早期に死滅するため、実験には培養液中にIL-5の添加が必要である。 好酸球のFcεRI発現に関し、我々が既に報告した肥満細胞での結果と比較すると、IgEが発現に必須である点が好酸球の際立った特徴と考えられる。現在、FcεRIを最大限に発現させた好酸球が、FcεRI架橋を刺激として脱顆粒を生じるかを検討中である。また、我々のpreliminaryな検討により、マウス肥満細胞のFcεRI発現を副腎皮質ステロイド剤が抑制するとの結果を得ており、好酸球のFcεRI発現に関してもステロイド剤が影響しうると予測される。このような、アレルギー性炎症細胞に発現されるFcεRIの機能および発現制御について次年度の研究でさらに明らかにしていきたい。学会発表および学術論文の作成は、次年度の結果と合わせて行う予定である。
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