研究概要 |
我々はこれまでHIV-1,HIV-2、SIVに対する中和モノクローナル抗体を作製してきた。これらの中和抗体はHIVのエンベロープV3領域に対する抗体であり、中和のメカニズムについては不明であった。一方、最近の研究から、V3領域はHIVのコレセプターであるケモカインレセプタと相互作用することが判明した。本研究の目的はV3に対する中和抗体の中和メカニズムを調べるとともにその抗イディオタイプタイプ抗体がヒトのケモカイン〜ケモカインレセプターシステムの中で、自己抗体となりうるかどうかを検索し、抗イディオタイプワクチンの可能性を検討する点にある。本年度は開発した単クローン抗体のケモカインシステムへの交叉反応性を調べたが、現在までのところ、交差反応は認められていない。また、3種類の中和モノクローナル抗体について抗イディオタイプ抗体を作製した。アフィニティクロマトグラフィーを用いて約90%の精製度を得た。これらについても直接のケモカインレセプターへの交叉反応性は認められなかったが、これらを再び免疫すると、オリジナルの単クローン抗体とは反応性の異なる抗体が誘導されてきた。誘導された抗・抗イディオタイプ抗体について中和能や交叉反応性の検討を推し進めるとともにさらに免疫を続け、ワクチン開発の可能性を検討している。
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