研究概要 |
シェーグレン症候群患者および対照者から採取した小唾液腺、リンパ節より、我々の確立した抗CD3抗体とIL-2を用いる手法によって、局所浸潤T細胞を分離増殖させ多数のT細胞株を得た。また、組織のeluateより限界希釈によって多数のT細胞クローン(CD4)を得た。既に行なった実験によって、唾液腺に浸潤するT細胞は、組織免疫学的にも、CD4優位であることがわかっている。まず、T細胞クローンを、唾液腺、リンパ節および末梢血から多数樹立させ、各々のサイトカイン産生プロフィール(IFNγ,TNFα,IL2,LL3,IL4,IL6,IL8,ILl0,TGFβ)を、固相化した抗CD3抗体、PMA+カルシウムイオノフォア、ならびにPHAで刺激して得た上清を用いて測定した。また、細胞ペレットよりRNAを抽出し、PCR法によりサイトカインメッセージを検出。さらには、細胞内サイトカイン測定(PMA+ionomycin,Brefeldin A,saponinを用いる)をsingle cellレベルで行なった.その結果、唾液線局所浸潤T細胞ならびに末梢血液T細胞ともにtype1サイトカインを優位に分泌することが明らかとなった。次に、分離したT細胞株ならびにT細胞クローンを用いて、Th1/Th2の分化を左右すると考えられるサイトカイン、すなわち、IL4、あるいはIFNγ、IL12、または、これらのサイトカインに対する抗体、さらには、Th1/Th2の制御因子となりうる種々のendocrine factorを用いて、Th1/Th2バランス制御の試みを行なった。その結果、上記に示したシェ一グレン症候群におけるTh1 dominanceが、endocrine factorのひとつである活性型ビタミンDにより柳制されTh1/Th2バランス偏向の補正が得られることが観察された。これらのin vitroの実験結果は、特定の免疫偏向を示す疾患における人為的な疾患制御という観点から、十分注目すべき現象であると考えられ、今後の臨床応用に向けた展開が期待される。
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