慢性関節リウマチでは、関節炎局所への著明な好中球浸潤が認められる。この好中球浸潤はRAの組織障害に重要な役割を担っている。RAでは、浸潤好中球アポトーシスは抑制され、好中球を介した炎症反応が亢進していると考えられる。そこで、本研究は、関節炎局所における好中球アポトーシス抑制因子を明らかにし、RAの炎症病態の解明とともに、好中球細胞死の制御による関節炎治療をめざすものである。本研究では、RA患者由来の滑膜細胞をIL-1で刺激し、培養上清中の好中球アポトーシス抑制因子を解析し、昨年度は以下の結果を得、論文として投稿した。 1.滑膜培養上清中には、複数の好中球アポトーシス抑制因子か見出されたが、そのなかで最も主要な好中球アポトーシス抑制因子はGM-CSFであった。2.他の抑制因子としては、PGE_2、TGF-beta、および分子量約25Kdの因子が確認された。この分子量25Kdの因子は、既知のサイトカインに対する抗体では中和されないことから、新規の因子である可能性があり、この因子の解明をめざして研究を継続している。現在、この因子を精製するために、滑膜細胞の大量培養を施工中である。3.滑膜細胞にNSAIDを添加すると、上清中の好中球アポトーシス抑制因子は減少することから、アラキドン酸代謝産物、特にPGE_2の関与が確認された。近年、PGE_2の受容体サブタイプが明らかとなっていることから、PGE_2受容体サブタイプによる好中球アポトーシスの制御を解析した。この解析により、EP4などを介したシグナルは好中球のアポトーシスを抑制し、逆にEP3を介したシグナルは、アポトーシスともネクローシスとも異なる好中球の細胞死を誘導することを明らかにした。このPGE_2による好中球細胞死の制御は炎症病態を考える上で重要であり、現在論文投稿中である。4.RAの治療に用いられている薬剤の好中球アポトーシスに及ぼす影響を解析した論文も現在投稿中である。
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