研究概要 |
本年度は,間質性肺炎例血清に見出された抗KS抗体とその対応抗原の分子免疫学的性状を追究した。【方法】(1)教室に自己抗体の検索依頼のあった1120例(PM/DM114;SLE392;強皮症220;慢性関節リウマチ56;これらの重複症候群94;特発性間質性肺炎102;関節痛・皮疹などを有する症例142例)を対象とした。(2)自己抗体は,二重免疫拡散法(ID),免疫沈降法(IPP)で分析した。(3)抗KS抗体の対応抗原の分析は,Lemer-Steitzに準じ,核酸成分は^<32>P燐酸-,蛋白成分は^<35>S-メチオニンで標識したHeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法により行なった。(3)アミノアシル化反応抑制試験(AAI):KS血清および対照血清,あるいはそのIgGとHeLa細胞抽出物をまず反応させ,HeLa-tRNA,ATP,アイソトープ標識アミノ酸を混和後添加し,そのアミノアシル化反応抑制活性を調べた。【結果】(1)抗KS抗体陽性3例を間質性肺炎例に見出した。(2)抗KS抗体は,IDで既知5種類の抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体とは異なる免疫学的特異性を示した。(3)抗KS抗体は,IPPで既知抗ARS抗体とは異なるtRNA^<Asn>と65kDa蛋白を沈降した。(4)抗KS血清,およびそのIgGはAAIでasparaginyltRNA合成酵素(AsnRS)活性を88%と有意(>50%)に抑制したが,他の19種類のARSのアミノアシル化反応を抑制しなかった。【結語】抗KS抗体は,AsnRSに対する新たな(6番目の)ARSに対する自己抗体であることが明らかとなった。また,臨床的には間質性肺炎との密接な関連が示唆された。
|