研究概要 |
本年度は,新たに見出された,6番目の抗アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase:ARS)抗体である,抗KS(asparaginyl-tRNA systhetase:AsnRS)抗体の臨床的意義・免疫学的性状を追求した。 【方法】1)慶大および共同研究施設の多発性筋炎・皮膚筋炎,SLE,強皮症などの膠原病および間質性肺炎患者約2500例を対象とした。2)自己抗体は免疫沈降法,アミノアシル化反応抑制試験で分析した。3)抗KS抗体のtRNA,蛋白成分の認識様式を調べるために、HeLa細胞抽出物をフェノール抽出により脱蛋白し,tRNA成分との反応を検討した。4)抗KS抗体陽性例の臨床免疫学的特徴を検討した。【結果】1)皮膚筋炎2例,間質性肺炎6例血清が既知抗ARS(HisRS,ThrRS,AlaRS,GlyRS,IleRS)抗体とは異なるtRNA^<Asn>と65kDa蛋白を沈降し,AsnRS活性を特異的に抑制し,他の19種類のARSのアミノアシル化反応を抑制しなかった。2)抗KS抗体陽性血清とそのIgGは,抗PL-l2抗体がtRNA^<Ala>を免疫沈降したのに対し,脱蛋白したtRNA成分と反応しなかった。3)7例(88%)に間質性肺炎を認めたが,筋炎は2例(25%)であった。多発性関節炎を4例(50%),レイノー現象を1例(13%)に認めた。【考案・結語】抗KS抗体は,抗ARS抗体症候群に特異的な臨床像を示したが,とくに,抗PL-l2抗体と同様に間質性肺炎と密接に関連することが明らかとなった。また,同抗体はtRNA成分と直接結合せず,蛋白成分が抗原認識に必要とされることが示唆された。今後,エピトープ,免疫遺伝学的背景の解析などの免疫学的性状の追求が必要と考えられる。
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