研究概要 |
平成10年度は、25塩基のランダムな配列のRNAライブラリーを用いたスクリーニング法により、膠原病患者血清と特異的に反応する新たなRNA抗原の塩基配列を決定し、このRNAと各種膠原病患者血清との反応性を検討した。その結果、シェーグレン症候群(SjS)患者血清より、これと結合するRNAの塩基配列、TSI・RNA決定された。TSI・RNAはCGAAAGUCCGAUCGGCGUAAUGUCAの塩基配列を有し、SjS患者群血清61例中32例、およびSjSの合併のない混合性結合組織病(MCTD)患者群血清6例中3例との反応を認めた。しかし、SiSを合併しない他の膠原病の患者血清とは反応を示さなかった。このTSI・RNAは抗SS-A抗体陽性血清と強く反応する傾向を示したが,TSI・RNAと患者血清との結合はSS-A抗原蛋白の添加にても抑制は見られなかった。また塩基配列上もhYRNAとの明らかな相同性を認めず、genebankのコンピューター検索にてもTSI・RNAと相同性を持ったDNA、RNAは見つからなかった。これらの結果より特定の塩基配列を持ったRNAと反応するSjSおよびMCTD患者血清の約半数例に認める新たな抗RNA抗体の存在が示された。平成11年度は、TSI・RNAの特異性について解析を加え、25塩基のうち17番から25番目を変異させたRNA、8番から15番目を変異させたRNA、2番から7番目を変異させたRNA、TSI-RNAと全く異なった塩基配列のcontrolを用意し、それぞれのRNAと患者血清との反応性を検索した。その結果、TSI・RNAの25塩基全体が患者血清との反応に関与していることを明かになった。平成12年度は、SiSにおける本抗体陽性例の臨床的特徴について検討したが、特に関連する病像を明かにすることが出来なかった。そこで抗TSI・RNA抗体がSiSに次いで高率に検出されたMCTDについて検討した。その結果、抗TSI・RNA抗体陽性MCTD(30%)では抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗U1 RNP抗体などの自己抗体、および血清低補体価等の検査所見、さらに賢症などの臨床所見が有意に高率に認められた。また、4例の症例において抗体価を経時的に測定し、一連の所見と比較検討したことろ、全例で病態の活動と相関して増減する事が示された。以上の所見より抗TSI・RNA抗体が病態の形成および自己抗体の産生機構において何らかの形で関与している可能性が示唆された。
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