研究概要 |
インスリン自己免疫症候群(IAS)は、1970年に平田らが世界で初めて報告した症候群である(J.Jpn.Diabetes.SOC.13:312,1970)。自己のインスリンに対する高力価の自己抗体(monoclonalとpolyclonalの2種類が存在する)が産生される。特異的なHLA拘束性抗原提示が特徴で、かつ抗体の性質とHLAアリールに強い相関が存在することは、いまなお他の自己免疫疾患にみられない特徴である。本年度におこなった研究業績を以下にのべる。ポルトガルより、2名のインスリン自己免疫症候群(IAS)の患者のインスリン抗体のスキャチャード解析とHLA血清学的タイピングとDNAタイピングを依頼される。1名はA23/68、B44/55、Cw2/w9、DR4/13、DQ1/4で、DRはDRB1^*0406/1302であった。インスリン抗体のスキャチャード解析では、polyclonalな曲線が得られた。他の1名は、A23/66、B49/51、Cw2/w7、DR4/7、DQ2/7であった。DRはDRB1^*0403/0701で、インスリン抗体のスキャチャード解析ではmonoclonalな曲線が得られた。この結果から、以下の新知見が得られた。1つは、DRB1^*0406/1302を持つIAS患者がmonoclonalなインスリン自己抗体を以ていたことは、これまでの我々の報告とそれに基づく仮説を支持するものでる。2つに、DRB1^*0403/0701を持つIAS患者で、はじめてmonoclonalなインスリン自己抗体を持つ患者を発見したことである。いま論文作成中である。また、日本人IAS患者で、はじめてDRB1^*0401を持つ患者が発見された。monoclonalなインスリン自己抗体であることを預言したところ、まさしくmonoclonalを示すスキャチャード解析結果がえられた。このことより、これまでの我々の仮説は支持されている。
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