研究概要 |
関節リウマチ(RA)の滑膜増殖には血管新生が関与している.そこで,現在臨床の場で繁用されている疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARDs)であるbucillamine(BUC),gold sodium thiomalate(GST),salazosulfapiridine(SASP),methotrexate(MTX)およびdexamethazoneの作用機序,特に併用時の相乗・相加作用を明らかにするため,血管増殖因子,VEGF(vascular endothelial growth factor)およびb-FGF(basic fibroblast growth factor)の抑制効果について検討した.その結果,b-FGFはSASPとGSTの併用でのみ有意に抑制され,VEGFの産生抑制効果はMTXとSASPの併用を除けばBUC,GST,SASPいずれの併用も有効で,これらは互いに相乗効果を示した.こうしたin vitroの結果はin vivo,すなわち,DMARDs投与後6ヶ月を経過した時点においても同様認められた(Arthritis Rheumatismに投稿中). 以上,in vitroで有効であったDMARDsはin vivoにおいても同様な結果,すなわち血管増殖因子を抑制するとともに,内因性血管抑制因子であるendostatinを増加させることも明らかになった.そこでRAにおいて増殖因子として前述したVEGF,b-FGFを,抑制因子としてendostatinの関節液および血中濃度を検討したところ,関節液中ではVEGF,b-FGFともにコントロール群(主として変形性関節症)に比べ有意に増加したが,endostatinはほぼ一定であった.一方,血中でも増殖因子はRAで有意に増加しているにもかかわらず,endostatinは血中と同様,両群間で有意差は認められなかった.このように,関節リウマチにおける血管新生は,関節滑膜局所における内因性血管増殖因子と抑制因子とのバランス機構が破綻することにより生じるのではないかと推論された.
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