悪性腫瘍に対する宿主の免疫監視機構を考えるうえで、腫瘍細胞特異的な細胞性免疫の、機能や役割を知ることはきわめて重要である。本研究は、ヒトパピローマウイルスのウイルス抗原を指標として、ウイルスの持続感染あるいは反復感染から腫瘍発生に至る過程で細胞性免疫はどのように変化しているのか、生体の免疫監視機構が外来抗原であるウイルスを保持する腫瘍細胞でさえも異物として除去できないのはなぜか、などの問題を解明するため、ヒトパピローマウイルス・タイプ16の遺伝子産物を特異的に認識するヘルパーおよびキラーT細胞の存在を証明し、誘導しえたT細胞の特徴と、抗原認識の分子機構を明らかにすることを目的とした。 我々は、平成10から12年度にかけて、産婦人科外来に種々の理由で来院した患者より、末梢血単核球を採取し、HLAの同定するとともに、HPV-16E6、E7のペプチド特異的なT細胞の誘導を試み、HPV-16E6、あるいは、E7のペプチド特異的なキラーT細胞、および、ペプチド特異的なIL-2の産生を検出しえた。また、HLA拘束性、認識するペプチド配列を解析するため、HPV-16E6、E7のペプチド特異的キラーT細胞の誘導を試み、誘導しえたキラー細胞よりT細胞クローンを誘導を試みた。さらに、IL-2を産生するヘルパーT細胞ラインから単一の抗原特異的なT細胞クローンを作成し、キラーT細胞同様、HLA拘束性、認識するペプチド配列の最小単位を明らかにし、HPV-16E6、E7中のエピトープを同定することを試みた。今後は、各HLAごとにキラーおよびヘルパーT細胞のエピトープを明らかにし比較検討するとともに、疾患の発生との関係、病態との関連を調べ、癌ワクチン作成の可能性について、さらに検討していきたい。
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