好酸球脱顆粒に対する免疫グロブリンおよび接着分子の関与に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670435
• 研究機関: 聖マリアンナ医科大学
• 研究代表者: 中川 武正 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (10107625)
• 研究分担者: 高藤 繁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (90179549)
• キーワード: 好酸球 / 上皮細胞 / 免疫グロブリン / 脱顆粒 / 接着

研究概要

最近の研究の進歩により気管支喘息の病態形成において好酸球がその脱顆粒により重要な役割を果たしていることが明らかとなっているが、組織において何を刺激としてどのようなメカニズムで好酸球脱顆粒が惹起されるかは不明な点が多い。本研究はヒト上皮細胞存在下での好酸球脱顆粒における免疫グロブリン及び接着分子の関与を調べることを目的とし、まず上皮細胞存在下における好酸球脱顆粒の基礎的検討を行った。
方法は、ヒト気管支上皮細胞株BEAS-2Bをホルモン添加無血清培養液HD-F12を用いてコラーゲン処理プレート上で培養し、connuentになった時点でTNFの存在下、非存在下で4時間培養した。次に正常人末梢血より分離した好酸球を加え16時間培養し、上清に遊離されたECPをRIAで測定した。
結果は以下のようである。無刺激の上皮細胞と好酸球のcocultureにおいて10^6好酸球当たり298±34ngのECPの自然遊離を認めた。上皮細胞をTNFで刺激しても、cocultureされた好酸球からのECP遊離の有意な増強はみられなかった。無刺激あるいはTNF刺激上皮細胞のみではECP遊離は検出されなかった。また、コラーゲン処理プレート上の無刺激好酸球は、前述の無刺激の上皮細胞と好酸球のcocultureの場合のECP遊離の約60%のECP遊離を認めた。好酸球と上皮細胞の接着について検討したところ、無刺激では好酸球接着は9.0±0.9%であり、上皮細胞をTMFで刺激しても好酸球接着の有意な増強は認めなかった。今後、上皮細胞上をさらに免疫グロブリンでcoatし、ECP遊離、好酸球接着について検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kunitoh H,Nakagawa T et al: "A double-blind,placebo-controlled trial of the thromboxane synthetase blocker OKY-046 on bronchial hypersensitivity in bronchial asthma patients." Journal of Asthma. 35(4). 355-360 (1998)
• [文献書誌] Takafuji S,Nakagawa T et al: "Release of granule proteins from human eosinophils stimulated with mast cell mediators." Allergy. 53. 951-956 (1998)
• [文献書誌] Takafuji S,Nakagawa T et al: "Eosinophil degranulation in the presence of lung fibroblasts." Int Arch Allergy Immunol. 117. 52-54 (1998)
• [文献書誌] Komase Y,Nakagawa T et al: "IgE antibodies against midge and moth found in Japanese asthmatic subjects and comparison of allergenicity between these insects." Allergy. 52. 75-81 (1997)
• [文献書誌] Nakagawa T et al: "Modulatory effects of epinastine hydrochloride on IL-4 mRNA expression by peripheral blood mononuclear cells." Int Arch Allergy Immunol. 113. 321-322 (1997)
• [文献書誌] Nakagawa T et al: "Increased prevalence of elevated serum IgE and IgG4 antibodies in students over a decade." J.Allergy Clin Immunol. 97. 1165-1166 (1996)