最近の研究の進歩により気管支喘息の病態形成において好酸球がその脱顆粒により重要な役割を果たしていることが明らかになっているが、組識において何を刺激としてどのようなメカニズムで好酸球脱顆粒が惹起されるかは不明な点が多い。平成10年度は上皮細胞存在下における好酸球税顆粒の基礎的検討を行った。その結果は、無刺激の上皮細胞と好酸球のcocultureにおいて10^6好酸球あたり298±34ngのECPの自然遊離を認めた。好酸球と上皮細胞の接着についても検討したところ、無刺激では好酸球接着は9.0±0.9%であり、上皮細胞をTNFで刺激しても好酸球接着の有意な増強は認めなかった。 平成11年度は、上皮細胞と好酸球の両者をそれぞれTNF、IL-5で刺激した場合のECP遊離と好酸球接着、上皮細胞上をさらに免疫グロブリンでcoatし好酸球とcocultureした場合のECP遊離を検討した。その結果は、好酸球のみの刺激ではECP遊離は増強しないのに対し上皮細胞と好酸球の両者をそれぞれTNF、IL-5で刺激すると、無刺激の場合に比べECP遊離は増強し、同様に好酸球接着も増強した。ECP遊離増強は抗CD18抗体により一部抑制され、抗CD18抗体は好酸球接着についても同様な抑制効果を示した。次に、上皮細胞存在下においてさらにIgG1でcoatした場合にコントロールに比べ有意に高いECP遊離を認めた。IgG2、IgG3、IgG4、sIgA、IgE、IgMでさらにcoatした場合はコントロールと差を認めなかった。以上の結果から、上皮細胞存在下における好酸球脱顆粒には、上皮細胞活性化、IgG1が影響し、その際に接着分子が関する可能性が示唆された。
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