研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は関節滑膜を病変の主座とする慢性炎症性疾患であり,増殖性滑膜炎により骨・軟骨は快が起こり高度の変形をきたす。RAの特徴であるパンヌスと呼ばれる炎症性肉芽腫組織は軟骨表面を覆うばかりでなく,軟骨下より骨組織を破壊侵入してゆく。しかし,このような骨破壊の過程でどのような細胞が中心的役割をしているかは明らかでない。そこで,RA滑膜組織培養によりin vitroで象牙片を吸収する系の確立を目的とした。 滑膜組織培養後,リンパ球の浸潤や線維芽細胞様細胞の増殖とともに,2週目よりtartrate-resistant acid phosphatase(TRAP)陽性の多核巨細胞の形成が始まりRA滑膜組織では6ヶ月以上に渡り多核巨細胞の形成が持続した。微小形態的にはruffled borderを持ち,細胞質には多数の大小の空胞,小胞体をみとめ,また類似した微小形態を持つ単核細胞もみられた。単核細胞はCD68,non-specific esterase陽性のマクロファージ様細胞で多核細胞の前駆細胞と考えられた。多核細胞はvitronectin receptor(VNR),V-ATPase陽性で,蛍光標識phalloidinで染色するとactin ringの形成がみられたが,[^<125>I]-calcitoninの結合はマウス骨髄細胞由来破骨細胞に比べて乏しかった。象牙片上で培養すると無数の深い骨吸収窩(resorption lacunae)を形成した。本培養系では滑膜由来マクロファージ様細胞の増殖が持続し,fusion,polarizationの経過をたどり骨吸収をきたすことから,RAにおいて滑膜細胞が骨破壊をきたす過程をin vitroで再現していると考えられる。現在,抗リウマチ薬,抗サイトカイン抗体,プロテアーゼ阻害薬,骨吸収抑制薬の効果を検討中である。
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