マウスにConcanavalin A(Con A)を単回静脈投与することにより、Tリンパ球活性化を介した肝炎モデルが作製される。今年度の研究により、本モデルでは早期に肝内にCD4^+Tリンパ球が浸潤し、その後肝小葉内の広範な肝細胞壊死が生じること、催炎性サイトカインであるTNF-α、IFN-γ、IL-1βが肝細胞障害に関わっていることから、自己免疫性肝炎のほかウイルス性肝炎、劇症肝炎など免疫学的肝細胞障害機序がその発症に関与する難治性肝疾患の有用なモデルとなることを明らかにした。また、TNF-αによってCXCケモカインの一つであるMacrophage inflammatory protein-2(MIP-2)が誘導され、多核白血球の肝局所への遊走活性化を行うなど、サイトカイン、ケモカインnetworkが肝障害発症に深く関わっていることを見いだした。さらに、抗凝固剤であるAntithrombin IIIが肝障害発症を阻止し、その作用機序としてTNF-αからのMIP-2産生を抑制すること、また、細胞外マトリックスである高分子ヒアルロン酸(HA)がTNF-α、IFN-γ、MIP-2産生を抑制し、肝障害発症を阻止することも見いだした。以上の研究からCon A肝炎モデルは免疫学的肝細胞障害の発症機序やその治療法の検討に有用なモデルであることが明らかになった。
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