胃粘膜における熱ショック蛋白質の発現および細胞防御機構に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670445
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 大高 道郎 秋田大学, 医学部, 助手 (30250872)
• 研究分担者: 伊藤 英晃 秋田大学, 医学部, 助教授 (80168369)
• キーワード: 熱ショック蛋白質 / ストレス蛋白質 / 胃粘膜傷害 / 神経ペプチド / TRH / 5-HT / 分子シャペロン

研究概要

平成12年度に得られた知見は以下の通りである。
平成11年度までに、in vivoにおいて5-HT,TRHを単独で投与することにより、胃粘膜でHSP60、HSP72をそれぞれ特異的に誘導し得ることが明らかにした。胃粘膜防御機構にはHSP72の発現が必須であることを明らかにした。
これらの結果をもとに、消化性潰瘍に対する治療を念頭に置いた、胃粘膜におけるHSP誘導法を開発すべく研究を進め、以下のことを明らかにした。
1)培養胃粘膜細胞におけるHSP72の発現量は、生体内必須微量元素である亜鉛の添加によって著明に増加すること。
2)in vivoの実験系でも亜鉛製剤を経口投与することにより、胃粘膜HSP72の発現を増加させることができること。
3)1),2)の実験系でHSP72の誘導により細胞保護作用が増強すること。
これらのことから胃粘膜におけるHSP72誘導が、消化性潰瘍をはじめとする胃粘膜病変の新しい治療法となり得る可能性が示唆され、今後、亜鉛の用量や投与法に関する詳細な検討を進める予定である。

研究成果

• [文献書誌] 大高道郎,小西永晃 他: "5-HTが血清および胃粘膜leptin濃度に及ぼす影響-CCK-8の作用との差異を含めて-"Prog Med. 20. 1695-1700 (2000)
• [文献書誌] Otaka M.: "Stress-related events regulate serum leptin level."Molecular Biological Approach to Gastrointestinal Disease. 13-16 (2000)
• [文献書誌] Pacheco I,Otaka M et al.: "Corticosteroid pretreatment prevents small intestinal mucosal damage induced by acetic acid-perfusion model without lipid peroxidation."Ulcer Res. 27. 183-187 (2000)
• [文献書誌] Odashima M,Otaka M et al.: "Effects of Cyclosporin A on water-immersion stress-induced gastric lesion and gastric secretion in rats."J Gastroenterol. 35. 369-371 (2000)
• [文献書誌] Iwabuchi A,Otaka M et al.: "Specific pre-induction of a 60-kDa heat shock protein (chaperonin homolog) by TRH does not protect colonic mucosa against acetic acid-induced lesion in rats."Dig Dis Sci. 45. 1480-1489 (2000)
• [文献書誌] Pacheco I,Otaka M et al.: "Corticosteroid pretreatment prevents small intestinal mucosal lesion induced by acetic acid-perfusion model in rats."Dig Dis Sci. (in press). (2001)
• [文献書誌] 大高道郎: "胃粘膜傷害とケモカイン「ケモカインと疾患」"医薬ジャーナル社、大阪. 238(184-188) (2000)