研究概要 |
【背景】Crohn病(CD)の病因として麻疹ウイルスの持続感染説が提唱されている。われわれは昨年の研究で、CD腸組織より抽出した麻疹類似抗原(CDX)が必ずしもCDに特異的にみられるものでないことを見出したが、Western blotではCD患者の1/3がCDXに対する抗体陽性と判断された。CDXのCD病因への関与の有無を明らかにするため、本年度は以下の方法により検討を加えた。 【対象と方法】1)腸組織におけるCDX陽性細胞数/有核細胞数を算出した。2)昨年CDX抗体陽性と判断されたCD患者血清に大腸菌ライセートを加え、Western blotを再検した。3)CD患者4例、潰瘍性大腸炎(UC)1例、non-IBD colitis1例の血中よりリンパ球を分離し、CDXによるリンパ球刺激テストを行なった。 【結果】1)CDX陽性細胞数/有核細胞数はCD,UC,non-IBD colitisのいずれにも正常に比し増加していた。2)再検したWestern blotでは、全例抗CDX抗体とは陰性と判断された。3)リンパ球刺激テストではCD患者4例中2例が陽性を示したが、UC,non-IBD colitis各1例も陽性を示した。 【考察】CDXの増加はすべての腸炎群で認められた。また、リンパ球刺激テストによりCD患者の半数、およびUC,non-IBD colitis患者各1例が陽性を示したことにより、CDXがこれらの腸炎の発症に関与している可能性が示唆された。今後、コントロールも含めさらに多数例の検討が必要と考えられた。
|