研究概要 |
現在,コレステロール(以下,Ch)胆石症に対する溶解療法(経口胆汁酸療法)の成功率は低く長期間を要することから,より有効な薬物療法の開発が望まれる.最近,我々は,魚油(エイコサペンタエン酸;EPA)が胆汁中レシチンを増加させCh結晶析出を抑制することによりCh胆石の予防効果を発揮することを見出した.本研究では,EPAがCh胆石に対して治療効果をも有するのではないか,との仮説に基づき,魚油(EPA)の胆石溶解効果を臨床的および実験的に探究することを目的とした.初年(98年)度に「Ch胆石症に対するEPA投与の臨床的効果」を検討した結果,EPAの6カ月投与が胆汁中の催石性指標(Ch過飽和度およびCh結晶析出時間)を顕著に改善することが判明した. そこで本年度は,「ハムスター胆石モデルにおけるEPAの胆石溶解効果の実験的検討」を行った.対象は,雄シリアンハムスター(4週齢,Sasco)50匹で,催石食により6週間飼育後,催石食単独または催石食+EPA(1000mg/kg)にてさらに6週間飼育した.開腹後,胆石総重量の測定,胆汁中Ch結晶観察(偏光顕微鏡),胆汁脂質組成分析を行った.その結果,催石食+EPA群では,催石食単独群に比し,胆汁中レシチンの増加とともに,胆石総重量の有意な減少が認められた. 以上,本研究により,初めてEPA製剤の胆石溶解効果が実験的に明らかとなった.現在,臨床例での長期投与を継続し溶解効果について評価を行っている.
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