研究概要 |
1.In vitroにおける検討-アンモニアによる胃粘膜上皮細胞アポトーシスの機序に関する研究 目的:Hp感染胃粘膜にみられる萎縮の機序として、Hpが産生するアンモニアが関与するか否かについて、および酸分泌抑制剤の投与がアンモニアの作用に及ぼす影響について検討した。 方法:胃粘膜実験系:(A)マウス由来胃粘膜上皮細胞(GSM06)に対して、培養液のpH5.0-7.0の条件下でアンモニアを投与し、胃粘膜上皮細胞のアポトーシスの出現を検討した。 成績:アンモニアはミトコンドリアよりチトクロームCを遊離し、カスパーゼ3を活性化してアポトーシスを誘導した。アンモニアによるアポトーシスは、胃内pHの高い環境下で著明であった。 結論:Hp感染胃粘膜において、酸分泌抑制剤の使用は胃内pHを上昇させることにより、胃粘膜上皮細胞のアポトーシスを促進することが示唆された。 2.In vivoにおける検討-酸分泌抑制剤の長期投与がHp感染胃粘膜の萎縮進展に及ぼす影響- 目的:酸分泌抑制剤の長期使用が胃粘膜萎縮の進展を加速するか否かについてin vivoの実験系を用いて検討した。 方法:マウスにHpを感染させた後、酸分泌抑制剤(H2-blocer,PPI)を一年間連日投与し、Hp菌量の変化、胃炎の程度、胃粘膜細胞回転、アポトーシスの出現、萎縮の程度について検討した。 成績:Hpによる胃粘膜萎縮の進展は、酸分泌抑制剤投与群において著明であった。酸分泌抑制剤の使用は、アポトーシスによる被蓋上皮細胞の脱落を促進し、頚細胞の増殖能を増大させ、被蓋上皮細胞への分化を促進したが、逆に腺細胞への分化は抑制した。 結論:酸分泌抑制剤の長期投与はHpの産生するアンモニアが、胃内pH上昇の結果上皮細胞に侵入しやすくなり、頚細胞から腺細胞への分化を抑制することにより萎縮の進展を加速することが示唆された。
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