研究概要 |
我々はB型肝炎ウイルスの受容体をクローニングする目的でアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)の外被(envelope)蛋白と結合する分子量180万の糖蛋白(gp180)をアヒル肝細胞から同定した(J Biol Chem 270:15022,1995)。gp180はこれまでに報告のなかった新規酵素でカルボキシペプチダーゼD(carboxypeptidase D:CPD)と考えられている(J Biol Chem 270:25077,1995)。実際、我々もマウスおよびヒトのgp180のホモローグをクローニングし、これらの遺伝子を培養細胞に発現したところ、酵素活性が証明され、報告した(Gene 215:361,1998)。最近ドイツのShcallerらのグループはgp180がDHBVの受容体の一部として機能しているだけでなく(Urban S.et al J Virol 72:8089,1998)、トランスゴルジに局在し、サイクリングしている蛋白であることを示した(J Virol 72:8098,1998)。gp180はDHBVの受容体の一部を構成する重要な蛋白であることが解明され,HIVにおけるCD4に相当する蛋白である可能性が高い。また我々はDHBVと近縁なサギB型肝炎ウイルス(HHBV:heron hepatitis B virus)を用いて、両者のキメラを作成し、アヒル初代肝細胞培養系への感染実験を行った結果、B型肝炎ウイルスのpreS領域に感染の種特異性を決定する領域があることを直接証明した(PNAS 92:6259,1995)が、この領域はその後の実験によりpreS内のgp180結合領域よりはN末端側に位置していることがわかった。この実験結果はUrbanらの実験結果と非常に相関性を示し、B型肝炎ウイルスにおいてもHIVと同様にco-receptorのような他の分子の関与が想定されている。我々はgp180のstableなtransfectantのcell lineを確立しており、この系を用いて、感染成立に重要な機能をするaccesory moleculeの同定を試みている。
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