研究概要 |
アヒルB型肝炎ウイルス(DHBV:duck hepatitis B virus)をモデルとしてB型肝炎ウイルスの感染成立機序の研究および増殖機序の解析を進めてきた。我々はDHBVの外被(envelope)蛋白と結合する糖蛋白gp180の精製およびcDNAクローニングに成功したが、この蛋白はcarboxypeptidase Dという新規の酵素であることがわかった。ドイツおよび米国の研究グループもgp180についての解析を行い、DHBVの感染成立に不可欠の高親和性受容体と世界的に認知されてきた。しかしgp180のみでは感染成立は起こらず別の機能分子の存在が想定されている。我々はアヒルgp180(CPD)を用いてマウス、ヒトのgp180もクローニングした。CPDは大きくA,B,Cと呼ばれる3つの機能ドメインに分かれるが、酵素活性はドメインAおよびBに、ウイルス結合性はドメインCに局在することが判明した。我々はさらにDHBV preSとの結合性のないニワトリのCPDをクローニングしてドメインCの中のわずか2つのアミノ酸置換がDHBVとの結合性を規定していることを見いだした。また我々はgp180のDHBV preS領域への結合部位の解析およびサギB型肝炎ウイルス(HHBV)とDHBVとのキメラウイルスの解析からgp180以外の機能分子が結合すると考えられるウイルス側の部位を同定してきた。その結果DHBVpreS内の第22-37アミノ酸の領域に存在することがわかった。さらにこの領域の中でHHBVとDHBVの間でアミノ酸変異がみられる部位にそれぞれ変異を導入したキメラウイルスを用いて、ウイルスの増殖および感染実験をおこなった。その結果この領域の変異が感染成立に大きな影響を及ぼすことが判明した。
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