研究概要 |
病変の広範な広がりのために,従来は根治的治療不能とされ,肝動脈塞栓術などによる姑息的な治療しかできなかった高度進行肝癌に対し,新たな経皮的局所療法と皮下埋め込み式動注ポートからの化学療法および遺伝子治療等を組み合わせることにより,根治を目指した集学的療法を開発することが,本研究の目的であった。 新たな経皮的局所療法の開発に関しては,経皮的ラジオ波焼灼療法を平成11年2月から導入した。平成13年3月までに新規症例,再発症例合わせて400例の肝細胞癌に施行している。12分間のablationで径3cmの範囲を確実に壊死させることができ,1〜2回の治療回数で,safety marginをもって病変の完全壊死が得られており,入院期間も短縮でき,非常に有用な経皮的局所療法である。今後は,経皮的局所療法の95%以上は経皮的ラジオ波焼灼療法になるものと思われるが,経皮的ラジオ波焼灼療法を行う上でのノウハウを更に蓄積していきたい(椎名)。 化学療法の最適化の検討に関しては,現在,皮下埋込式動注ポートからlow dose FP療法(CDDP 10mg/hr,5-FU250mg/5hrs,5日連続,2日休薬を1クールとして,4クールで1セッション)を行い,データを分析することにより既存の化学療法に対する有効性に関与する因子を分析し,既存の化学療法の有効例と無効例を事前に判別できないかを検討中である。DNAチップの応用も検討中である。さらに既存の化学療法が無効な症例に関しては,平成12年より,新たなレジメによる化学療法としてインターフェロンと5-FU系の薬剤を組み合わせたレジメを施行中あり,症例数を増やしてその有用性を検討中である(加藤)。 遺伝子治療に関しては,ヌードマウス移植モデルを用いて有用性と安全性を検討し,臨床応用への可能性を検討していく予定であるが,やや足踏み状態が続いている(松村)。
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