本研究は、マウスレトロウイルスのLP-BM5マウス白血病ウイルス感染B6マウス(マウスAIDS=MAIDS)のリンパ節ないし 臓細胞を同系B6ヌードマウスに移入することで実験性腸炎を作出、その病態をひと炎症性腸疾患と対比して解析することにより、本モデルを炎症性腸疾(潰瘍性大腸炎)の動物モデルとして確立することを目的としている。平成10年度中の実験計画では、本モデル大腸炎発症に関与する炎症細胞の同定を目標とした。 B6マウスにLP-BM5を腹腔内接種し、感染後8週のMAIDSマウス 臓ないしリンパ節細胞をB6ヌードマウスに移入した。移入4週ころよりヌードマウスには下痢・下血が生じ細胞移入6週までに全てのマウスが死亡した。病理組織学的解析より、大腸炎は粘膜層・粘膜下層に限局し、大腸上皮のび欄・過形成、陰 膿 、などの潰瘍性大腸炎様の所見が見られた。大腸浸潤細胞をFlowcytometryにより解析するとCD4+およびMac-1+細胞が主体となっていることが分かった。免疫蛍光抗体法によりそれら浸潤細胞の局在を解析したところ、共に大腸粘膜固有層内にび蔓性に存在し、特に大腸上皮び欄直下には後者が集族していることが特徴であった。これらも潰瘍性大腸炎で一般的にみられる結果に類似していた。 次に、大腸組織よりmRNAを抽出しRT-PCR法によりcytokine産性パターンを解析したところ、IFN-γおよびIL-10のmRNAが対照群に比べ優位に増加していることが明らかとなった。 さらに、これらcytokine産生細胞の大腸における局在を明らかにするため、二重免疫蛍光抗体法を用いて解析したところ、CD4+細胞は主にIL-10を、Mac-1+細胞がIFN-γとIL-10の両者を産生していることが明らかとなった。 本研究の成果は、日本消化器免疫学会、日本リンパ学会、米国消化器病学会などで報告し、国内外の雑誌に発表している。平成11年度ではさらに研究を発展させる予定である。
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