研究概要 |
ヒト肝癌ではIV型コラゲナーゼであるMMP-2とその活性化酵素であり間質コラゲナーゼ作用を有するMT1-MMPが癌の浸潤・転移に深く関わっていることが明らかになっている.一方,癌細胞により活性化された伊東細胞が癌細胞周囲に集まり,癌細胞と伊東細胞がサイトカインなどを介して細胞増殖や細胞運動性,MMP-2,MT1-MMPの発現とその酵素活性などの点で相互に影響を及ぼしあうことにより癌細胞の浸潤が促進されている可能性がある. そこで平成10年度の本研究では,培養肝癌細胞株HUCCT-1と培養伊東細胞株LI-90を使用したin vitroの系で,肝癌細胞と伊東細胞の両者の相互作用について以下の点を明らかにした 1. 肝癌細胞HUCCT-1の伊東細胞LI-90に対する影響をtranswell chamberを用いco-cultureを行い,細胞形態の変化について検討した.その結果,LI-90の形態はco-culture前はhill and valley状で細長い星状であったが,co-cultureにより細胞は伸展し,一見,線維芽細胞様の形態を呈した. 2. 再構成基底膜であるマトリゲルを介したtranswell chamberを使用し,下室でLI-90(4x10^4)を培養あるいはコントロールとして何も培養しない条件下で上室にHUCCT-1(1x10^5)をまき,マトリゲルを通過したHUCCT-1細胞数を比較した.17時間後の浸潤細胞数は,コントロール61.0±18.0に対し下室でLI-90を培養したほうは134.9±29.7と有意に多かった.これよりLI-90はHUCCT-1の浸潤能を亢進させる作用があると考えられた. これらの結果より,in vitroの系においても肝癌細胞と伊東細胞の密接な関係が示唆された.
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