研究概要 |
平成10年度の研究では,培養肝癌細胞株HuCCT1と伊東細胞株LI90を使用し,(1)co-cultureによりLI90は伸展し線維芽細胞状の形態を示すこと,(2)マトリゲルをcoatしたtranswell chamberを用いた浸潤実験でLI90がHuCCT1の浸潤能を亢進させることを明らかにした.平成11年度では,両細胞の相互作用について以下の点を明らかにした. (1)LI90のHuCCT1への浸潤能亢進作用機序を検討するためtaranswell chamberを用いたmigration実験を行い,LI90およびLI90の培養上清がHuCCT1のmigrationを亢進させた.このことよりLI90の産生する液性因子がHuCCT1の浸潤,migrationに関与していることが示唆された. (2)HuCCT1のLI90に及ぼす影響について,増殖,migration,MMP-1,2,14の遺伝子発現の点から検討した.Transwell chamberを介したLI90の増殖能の検討では,HuCCT1とのco-cultureにより増殖能が亢進した.MMP-1,2,14の遺伝子発現は,co-culture24時間後の細胞よりRNAを抽出し,RT-PCRで検討の結果,いずれのMMPも遺伝子発現量が増加した.Migration実験は,下室にHuCCT1を培養し,上室にLI90をまき,8時間後のtranswellの下面に移動した細胞数を検討したが,下室に癌細胞を培養したほうがしないものより細胞数は多かった.これらより,癌細胞が活性化伊東細胞の増殖能,MMPsの遺伝子発現量,migration能の亢進に関与していることが示唆された. ヒト肝癌組織では癌細胞の間質には活性化された伊東細胞やMMPsの存在が観察され,癌の浸潤に重要な働きをしていることが推測されていたが,今回の結果はこれを支持するものである.
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